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「温水」から「スチーム」へ変更するポイント

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「温水」から「スチーム」へ変更するポイント

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【初心者向け】工業用攪拌タンクの加熱を「温水」から「スチーム」へ変更するポイントと注意点

工場の生産現場において、「既存の工業用タンク(攪拌槽)を使って、これまでとは違う新しい製品を作りたい」というニーズは頻繁に発生します。その際、大きな壁となるのが「温度管理」です。これまでは「温水」での加熱で十分だったものの、新製品の製造にはさらに高い温度が必要となり、「スチーム(蒸気)」での加熱方式へ設備を改造したいというご相談は少なくありません。

しかし、加熱方法を温水からスチームへと単に変更するだけでは、法律上の規制や安全面での重大なリスクが伴います。本記事では、設備エンジニアリングの専門企業であるKH工業の平野氏が実際に手掛けた事例をもとに、既存タンクの加熱方法をスチームに変更する際の重要なポイントを、初心者の方にも分かりやすく解説します。「第2種圧力容器」や「設備の冷却プロセス」といった重要なキーワードを交えながら説明していきます。

1. なぜ「温水」から「スチーム」への設備変更が必要なのか?

新製品製造に向けた「より高い温度」へのニーズ
ある工場のお客様から寄せられたご相談は、「数年前に導入した攪拌槽(かくはんそう:液体を混ぜ合わせるためのタンク)の加熱設備を改造できないか」というものでした。
当初の仕様では、比較的低い温度で十分だったため、ドラム缶を利用した温浴槽の温水を使ってタンク内の溶液を温めるシステムが採用されていました。
実はこのシステムも、本来であれば専用の「温水ユニット」を設けるべきところを、お客様の強いご要望によりドラム缶の温浴槽と温水ラインを兼用するという特殊な設計で行われていたものです。
しかし、時間の経過とともに「新しい製品を作るために、もっとどんどん温度を上げたい」という新たな要望が生まれました。
温水による加熱では到達できる温度に限界があるため、より高温でのスピーディーな加熱が可能な「スチーム(蒸気)」を導入することになったのです。

2. スチーム変更時の最大の壁!「第2種圧力容器」の規制

温水からスチームへの変更において、最も注意しなければならないのが法律上の規制です。配管を繋ぎ変えてスチームを入れれば終わり、という簡単な話ではありません。
既存のタンクは「後から」検定を受けられない
日本の法律では、一定以上の圧力を保持する容器は安全確保のため「第2種圧力容器」に該当し、製造時に労働基準監督署等の厳格な検定を受けることが義務付けられています。
ここでの最大の問題は、「すでに現場に設置され稼働している既存のタンクは、後から第2種圧力容器としての検定を受けることができない」という点です。もし、スチームを導入した結果としてタンク内の圧力が規定値を超えてしまうと、法律違反となり設備が使用できなくなってしまいます。

解決策:圧力を「0.2MPa未満(0.19MPa)」に抑える専用設計

この問題をクリアするためには、「第2種圧力容器の規制に該当しない範囲」でスチームを利用する設計変更が必須となります。
具体的には、タンクにかかる圧力が「0.2MPa(メガパスカル)未満」になるようコントロールします。実務的には安全性を考慮して「0.19MPa」といった圧力設定で設計することが一般的です。
既存の温水ラインは残しつつ(将来再利用する可能性があるため直近で塞ぐ)、新たにボイラーからのスチームラインを分岐させてタンクのジャケット(外側の保温層)に接続します。この際、圧力が上がりすぎないように「安全弁」を設置し、スチームが冷えて水に戻ったものを排出する「ドレン抜き」や「トラップ」などを適切に組み込む高度な設計が行われます。これにより、既存設備を合法かつ安全にスチーム対応へと進化させることができるのです。

3. 加熱後の「冷却プロセス」も忘れずに!安全に製品を取り出す工夫

スチームを使って高温に加熱できるようになった後、セットで必ず考えなければならないのが「冷却プロセス」です。
火傷を防ぐための冷却が不可欠
製品が完成した後、高温のままタンクから取り出そうとすると、作業員が火傷をする危険性が非常に高くなります。そのため、製品を次工程へ送る前や取り出す前には、タンク全体を安全な温度まで冷やすプロセスが必要です。

本来推奨される冷却方法と、今回の「簡易的な解決策」

工業設備においてタンクを冷却する場合、本来であれば「冷却塔(クーリングタワー)」や「チラー」と呼ばれる専用の冷却装置を設け、冷水を循環させるシステムを構築するのがセオリーです。
しかし今回の事例では、予算やスペース、その他の複合的な要因から、大掛かりな冷却専用設備の導入が困難でした。そこで、お客様の要望を踏まえて採用されたのが「工場内の上水(水道水)を使った簡易的な冷却システム」です。
工場内を通っている上水の配管を分岐させ、自動流量計を通して必要な分だけタンクのジャケットに流し込みます。熱を奪って温かくなった水は循環させず、排水ラインにそのまま「垂れ流し」にするという設計に変更されました。理想的な形ではありませんが、既存の水回りを上手く活用することで、コストを抑えながらも「作業員の安全を守る」という最大の目的を達成しました。

4. 既存設備の改造は、専門的な知見を持つプロに相談しよう

ここまで解説してきたように、既存設備を温水加熱からスチーム加熱へ変更するには、以下のポイントをクリアする必要があります。
法規制(第2種圧力容器)を回避するための適切な圧力制御(0.19MPaなど)と安全装置の設計
配管の取り回し(スチームライン、ドレン抜き等の新設)
現場の制約に合わせた、安全確保のための冷却システムの構築
新しい設備をゼロから作るのに比べ、既存設備を活用する改造はコスト削減に繋がりますが、その分「既存の条件の中でいかに最適解を見つけるか」というエンジニアリングのノウハウが求められます。

5. まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、工業用攪拌タンクの加熱方法を「温水」から「スチーム」へ変更する際の実例と注意点についてご紹介しました。
目的: 新製品製造に不可欠な「高温加熱」を実現するため。
最大の壁と対策: 既存設備は後から「第2種圧力容器」の検定を受けられない。そのため、圧力を0.2MPa未満(0.19MPa等)に抑え、安全弁を設置する法規制をクリアした設計が必要。
冷却の重要性: スチーム加熱後は火傷防止のために冷却が必須。今回は状況に応じ、冷却塔を使わずに上水を活用した簡易的な冷却設計を採用。

ケイ・エイチ工業では、「今の設備をこんな風に変更したい」「温度をもっと上げたいがどうすればいいか」といったご相談を、オンラインにて無償で受け付けています。設備の改造や見直しをご検討の際は、ぜひ一度、ご相談されることをおすすめします。

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