【プラント工事】苛性ソーダ投入ラインの改良・移設!コストを抑えるポイントをプロが解説
長年稼働している工場では、「設備の老朽化」や「工場内のレイアウト変更」を理由に、薬品の投入ラインの改良やタンクの移設工事が必要になるケースがあります。
本記事では、プラント工事の専門家が実際の現場調査の事例をもとに、「苛性ソーダ」の投入ライン改良工事について分かりやすく解説します。専門的な用語も初心者向けに噛み砕いて説明し、限られた予算内で工事コストを大幅に抑えるための工夫もご紹介します。
苛性ソーダとは?プラントで扱う際の基本と注意点
プラント設備でよく使われる化学薬品の一つに「苛性ソーダ」があります。
アルカリ性を代表する重要な化学薬品
苛性ソーダは、塩酸や硫酸といった酸性の薬品と並んで、化学プラントをはじめとする様々な分野の工場で広く使われている代表的なアルカリ性の化学薬品です。通常は「タンクローリー車」で工場に運び込まれ、受け入れ口から工場内のタンクへと投入されます。
凝固点が12度!冬場に必須の「トレース」対策
苛性ソーダを扱う上で最も注意しなければならないのが「温度管理」です。苛性ソーダの凝固点(液体が固まり始める温度)は12度です。そのため、夏場は問題ありませんが、冬場に気温が10度を下回るような環境では、配管内やポンプの中などで液が白く固まってしまう性質を持っています。
配管内で苛性ソーダが凝固して詰まると、ラインが停止してしまい大きなトラブルに繋がります。そのため、配管やポンプ、タンクには「トレース」と呼ばれる保温・加熱設備を施すのが一般的です。具体的には、蒸気(スチーム)を通す銅管を巻き付けたり、電気を用いたりして、苛性ソーダが冷えて固まるのを防ぎます。
苛性ソーダ投入ラインの改良工事が必要になる理由
今回調査が行われた現場でも、すでにお客様の工場で苛性ソーダの投入ラインが稼働していましたが、いくつかの問題があり改良工事が必要となっていました。
タンクの老朽化と工場のレイアウト見直し
長年使用したタンクの老朽化は、どの工場でも直面する問題です。今回の事例では、既存の苛性ソーダタンクが工場の「ど真ん中」に設置されていました。元々はその近くで苛性ソーダを使用する工程があったものの、設備の稼働がなくなり、現在のレイアウトではタンクが邪魔になってしまったのです。
搬入作業の効率化と省スペース化
そのため、「タンクローリーの搬入口に近く、邪魔にならない場所」へタンクを移設することが今回の大きな目的でした。
実際の工事事例:狭いスペースへのタンク移設における工夫
新しいタンクの移設先は、建屋のすぐ側にある「小屋」のようなスペースに決定しました。しかし、そこには現場特有の物理的なハードルがありました。
天井が低い場所へのタンク設置
移設先の小屋は、天井の高さが最も低いところで2.7m程度しかなく、さらに傾斜がついているという狭い空間でした。加えて、苛性ソーダのタンクを設置する際は、万が一の液漏れに備えて周囲に「防液堤(漏洩を防ぐための囲い)」を設け、高さ200mm程度の基礎を新しく組む必要があります。
通常、苛性ソーダのタンクには背の高い「円柱型の丸タンク」が使われますが、今回は天井の低さと基礎の高さを考慮し、通常とは異なる背の低い特殊な形状のタンク(容量2立米)を採用する工夫が必要となりました。
最新のデジタル液面計(レベル計)の導入
タンクの移設に伴い、タンク内の液面(レベル)を測る計器も、従来のアナログ式からデジタル表示(レーダー式)に変更したいという要望がありました。これにより、現在の液量がデジタルで分かりやすく表示されるようになります。
【重要】改良工事のコストを大幅に抑える裏ワザ
設備を新しく移設・改良する際、一番の課題になるのが「予算(コスト)」です。特に自動制御に関わる「電気計装工事」は高額になりがちですが、今回の事例ではプロならではの視点でコストを劇的に抑える提案が行われました。
既存の制御盤(システム)をそのまま活用する
通常、工場内の投入ラインは、製造工程全体を管理する大きな「制御盤」によってコントロールされています。液面が下がったら自動でポンプが動き、上限に達したら止まるといった自動制御が組み込まれています。
もし、タンクを移設したことでこの制御システム自体を新しく作り直したり、プログラムを変更したりすると、製造工程全体の設定を見直す必要があり、膨大な手間とコストがかかってしまいます。
電気計装工事費を削減するポイント
そこで今回は、「既存の制御システムをそのまま使う」という方法がとられました。具体的には、ポンプをON/OFFするための配線だけを、新しいタンクの位置まで引き直して既存の制御を活かします。
さらに、新しく導入したデジタルの液面計は、工場の自動制御には連動させず、「ただ液面を単独でデジタル表示するだけのシステム」として独立させました。これにより、大元の複雑なプログラムをいじる必要がなくなり、電気計装工事の費用を大きく削減することに成功したのです。
まとめ
苛性ソーダの投入ラインの改良・移設工事について、実際の現場事例をもとに解説しました。今回のポイントは以下の3点です。
- 苛性ソーダの特性に合わせた設備づくり:凝固点が12度と高いため、冬場の凍結に備えてタンクや配管・ポンプにスチームや電気による「トレース(保温)」を必ず施すこと。
- 現場の状況に合わせた柔軟な設計:天井が低い場所への移設では、防液堤や基礎の高さを計算に入れ、背の低いタンクを選定するなどの工夫が必要になること。
- 既存設備の活用によるコスト削減:大元の制御盤のプログラムは変更せず、既存の制御を活かしながら配線の引き直しや単独の表示システムを組み合わせることで、電気計装工事費を大幅に抑えられること。
プラント設備における投入ラインの改良工事は、ゼロからすべてを新設するよりも、「今ある既存の設備や制御をいかに上手く活かしてコストを抑えるか」が重要になります。工場設備の老朽化やタンクの移設でお悩みの場合は、ぜひ参考にしてみてください。
他のプラントエンジニアリング課題解決事例をご覧いただきたい場合は、こちらをご覧ください。>>ケイ・エイチ工業へのお問い合わせはこちら。
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